医療的ケア児の母親が、子どもを殺してしまう時

医療的ケア児の母親が8歳の子どもを放置して殺してしまう事件が発生しました。なぜこんな悲しいことが起きるのでしょう。支援現場の立場から解説しました。
駒崎弘樹 2024.11.26
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痛ましい事件が起きました。

<i>たん吸引が必要な女児が死亡 放置し死なせた疑いで母親を逮捕 普段は1人で介護 調べに「言いたくない」</i>

たん吸引が必要な女児が死亡 放置し死なせた疑いで母親を逮捕 普段は1人で介護 調べに「言いたくない」

たん吸引が必要な子どもを17時間放置すればどうなるか。母親は分かっていたはずです。ですので、彼女は子どもの死に当然責任はあります。

ですが、これまで8年間、2時間起きのケアを欠かさずやりながら、この医ケア児を含めて3人の子どもをひとり親として育ててきたという背景を見ると、やるせない気持ちになります。殺人を過剰に擁護したり、情報が不足する中、過剰に代弁することも適切ではないでしょう。

しかし今回は、長年医療的ケア児の支援をし、医療的ケア児支援法の成立に尽力した、「支援当事者」の立場から、なぜこういうことが起きてしまうのか、を語りたいと思います。

【医ケア児の母親たちの声】

今回、ご自身が医ケア児の母であり、その体験を綴った著書も出されている加藤さくらさんの協力を得て、当事者たちの声を集めてみました。

まず、どんな思いを抱えているか、その片鱗を見てみましょう。

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